新規事業の立ち上げを模索する中で、共創事業や事業共創というキーワードを目にすることがあるのではないでしょうか。
本記事ではこの共創事業について解説するとともに、国内企業の事業共創事例も紹介します。
新規事業を立ち上げ異なる業界、異なる技術を持つ企業などのステークホルダーが協力し合い、社会に変化をもたらすような新たな価値、新たな仕組み、新たなサービスを提供するのが共創事業(事業共創)です。
経済産業省の調査報告書では、価値共創の定義について下記のようにまとめています。
「社会に変化をもたらす新しい価値を共に生み出す活動。そのために、画一的でない価値観を有する多様なステークホルダーと、共有された大きな目的のもと、創造的対話を継続的に実施する。各々が貢献(提供)できる資源を持ち寄り、組み合わせることで、実験・実装を行い、地域社会の共感を呼んでいくもの。」
※引用元:経済産業省「令和 3 年度企業による価値共創事業の実態調査報告書」(https://www.kansai.meti.go.jp/2-3sangakukan/kachikyousou/houkokusyo.pdf)
単に製品やサービスを提供するのではなく、すべてのステークホルダー(関連企業・パートナー企業・消費者・自治体など)と協力し合って、これまでにない価値あるサービスや製品を社会に提供していくことが事業の共創に求められています。
共創事業の特徴には以下のようなものがあります。
事業を共創する相手は、ありとあらゆるステークホルダーです。協力し合う対象の多様性も、共創事業の特徴のひとつです。
また企業の規模や力の強弱による主従関係はまったくなく、新しい価値を生み出すという同じ目標を持ったパートナーとして、対等な関係で協働するという点も特徴的です。
まったく異なる業界や事業における技術や知見を掛け合わせることによって、予想以上のシナジー効果を生み出す可能性があります。
新しい視点や価値観が交差することで、サービスや製品に独自性が生まれ、顧客満足度を上げることができます。
これまでまったく交わることのなかった企業体同士が、異なる視点で協業を模索することにより、顧客にとって価値ある利便性や競合サービスにはない独自性を生み出すことができます。
新たな価値を創出することで社会に貢献していけるという点も、共創事業の大きな特徴です。
共創事業の特徴には以下のようなものがあります。共創相手と技術やアイデアを共有したり、お互いの専門領域で意見を交換したりすることで、イノベーションを促進する可能性が高まります。
着眼点の異なる専門家と協力し合うことができるため、技術開発だけでなく人材育成にも役立ちます。
共創とよく似たものに「オープンイノベーション」というやり方がありますが、共創との違いはあるのでしょうか。
オープンイノベーションは自社や他社の技術や知識、知見を取り入れて製品やサービスを開発していくことを指しますが、イノベーションを加速させて競争力を高めることを目標としています。
共創はオープンイノベーションを包含する事業手法なのですが、社会に新しい価値を創造するということを目標としている点で、オープンイノベーションとの使い分けをしています。したがってじつはオープンイノベーションも共創の一部に含まれると言えます。
共創はより包括的かつ広義の意味で使われることが多く、新しい価値を生み出す取り組み全般を指すことが多いようです。
まず、自社がどのようなリソースを必要としているのか、どのようなニーズがあるのかを明確にしておきましょう。その上で、関連業界のセミナーや展示会に参加してみるのも有効です。なぜなら、そうした場で業界や技術に関する情報を得ることは、共創パートナーを探す上で役立つからです。
そののち業界特化型のオンラインマッチングサービスや事業共創のプラットフォームなどを活用して、共創パートナーを探してみてください。
インターネットに条件や希望などを入力して検索しながら、共創パートナーの候補をリストアップして、一覧化しておくと効率的です。
ホームページやSNSなどでさらに情報を収集し、技術や実績なども調べてリストに記載しておくとよいでしょう。
共創事業の成功事例などを調べて参考にすることも有効です。
事業共創にもいくつかのタイプがあります。代表的なものは以下の3つです。
共創パートナー同士が対等で双方向に協力し合うかたちでビジネスを協業していくスタイル。プロジェクトや事業の問題や課題をフィードバックしあって、双方が同じ目標に向かって進んでいくスタイルです。
自社に不足しているリソースや技術を他社と協力することによって補うスタイルが提携タイプです。技術や知見だけでなく、人材やアイデア、営業なども含め提携することでイノベーションを加速し、提携する会社同士がどちらも効率的に事業を展開していくことができます。
共創パートナーとなる企業だけでなく、ひとつのコミュニティやコンソーシアムを形成し、社会における課題や問題を一緒に解決していくスタイルが共有タイプです。コミュニティには企業体だけでなく、有識者や専門家、研究機関、自治体、行政なども参画することがあります。各組織がそれぞれの意見を出しながら議論して、よりよい解決策を模索していくことができます。
あえて事業を共創するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
共創する企業がお互いに持っている技術や製品、サービスを活用することにより、スピーディな開発とローンチを可能にします。
競合企業やサービスが多い場合、開発からローンチまでの期間が短ければ短いほど、チャンスが広がるというものです。
自社内だけで新規事業を立ち上げようとすると、これまでの常識や技術にとらわれて発想の転換が難しいものですが、まったく異なる価値観で動いてきた共創パートナーと出会うことによって、これまでにない発想やアイデアに恵まれることも少なくありません。
開発や販促、営業などさまざまなシーンで、共創パートナー同士がリソースを補完しあえるというメリットがあります。自社にはない技術を借りて開発したり、販路や営業先を共有して顧客開拓につなげたりして、新規ビジネスの成功を後押しすることができます。
ただし、共創にはデメリットも存在します。異なる企業文化や価値観を持つ組織間のコミュニケーションには時間と労力がかかり、プロジェクトの進捗管理やルール策定も複雑になることがあります。もしこれらの課題に不安を感じる場合は、事業共創に関する専門的な知識や経験を持つ外部のサポートを活用することも有効な手段です。
このようなデメリットに不安を感じる場合は、事業共創の実績を多数持っている専門会社に依頼して、共創事業のサポートをしてもらうとよいでしょう。
国内企業の事業共創の事例をいくつか紹介します。
東海理化×dotD 「OKAI RIKA DIGITALKEY」
株式会社東海理化と株式会社 dotDは、「デジタルキー領域における戦略的協業」に合意。東海理化のキーセキュリティ技術の実績とdotDが持つデジタルテクノロジーとソフトウェアビジネス化のノウハウをかけ合わせ、さまざまなユースケースに対応するサービスを展開しています。
東海理化は自動車用各種スイッチやデジタルキー、社用車管理のDXなどを手掛けるメーカーですが、「クルマの鍵屋だからできた安心安全のデジタルキー」を掲げ、自動車業界のみならず、さまざまな業界に向け製品を提供しています。
サービス事業者の事業形態に合わせ、機能性や仕様などをカスタマイズ。実証実験から本番運用まで支援してくれます。
※参照元:PRTIMES「東海理化とdotDがデジタルキー領域で戦略的協業」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000060864.html)
dotD 「dotD CFP Calculator」
株式会社 dotDが開発したCFP計算アプリ「dotD CFP Calculator」は、経済産業省の実証・支援事業「令和6年度蓄電池等の製品の持続可能性向上に向けた基盤整備・実証事業」として採択された、カーボンフットプリント(CFP)を迅速かつ正確に算出できるアプリケーションです。
開発した計算アプリを年商10億円以下の企業に無償で提供、カーボンニュートラル社会の実現を事業創造という観点から支援しています。これも事業共創のひとつのスタイルです。
無償提供することにより各企業とのシナジー効果が生まれ、欧州電池規則への対応速度を向上させていくことを目指しています。中長期的にはこれを基に異なる業界や各国の法制度にも対応できる展開を見据え、無償提供をおこなっています。
参照元:PRTIMES「『dotD CFP Calculator』経済産業省の補助事業として採択され、さらなる発展へ」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000060864.html)
KDDI×dotD 「auわんにゃんサポート」
KDDI株式会社と株式会社 dotDの共創事業「auわんにゃんサポート」は、愛犬や愛猫の健康管理をサポートするサービスです。月額550円でGPSを使った散歩ルート・距離の自動計測ができ、通院履歴もわかるなど健康管理に役立てることができます。
24時間獣医師などに無料相談できる「わんにゃん相談サービス」やペットのけがや入院費を補助する「ミニペット保険」などもセットで利用が可能です。
dotDが開発した「onedog」(愛犬の散歩や健康状態を記録できるアプリ)の使い勝手の良さから、KDDIが新しいペット事業立ち上げの協業相手としてタッグを組むことに。お互いの技術を掛け合わせることによって、開発着手からたった6カ月で立ち上げまで進んだそうです。
※参照元:PRTIMES「犬・猫の健康管理をサポートする「auわんにゃんサポート」を提供開始」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000060864.html)
森永製菓×アンジー 「おかしプリント」
森永製菓株式会社と株式会社アンジーの共創事業「おかしプリント」は、ユーザーがお菓子のオリジナルパッケージをつくることができるサービスです。
株式会社アンジーは写真加工アプリ「Pico Sweet(ピコ・スイート)」などを手掛けるスタートアップ企業。森永製菓が小ロットからオリジナルの菓子を作るための協業相手を探し、アンジーとの事業共創が実現したということです。
現在個人向けのサービスは終了しているということですが、「ビジネスコミュニケーションに、美味しい一手を」というコンセプトのもと、販促ツールとして法人向けのノベルティーサービスを展開しています。
※参照元:OPEN HUB「自動運転から歯ブラシまで。共創が生んだ日本企業のイノベーション7つ 前編」(https://openhub.ntt.com/journal/1013.html)
セコム×アジラ 「セコムAI行動検知システム」
セコム株式会社と株式会社アジラの共創事業「セコムAI行動検知システム」は、アジラが開発・提供している行動認識AIを活用したセキュリティシステムです。多様化したニーズに応えるためにセキュリティシステムの高機能化を図る目的で、セコムとの事業共創が実現しました。
アジラはセコムのほかにも東急株式会社および東急セキュリティ株式会社との事業共創で「行動認識AI活用による画像解析共同実証実験」をおこなうなど、さまざまな分野で行動認識AIの共創を展開しています。
※参照元:イノベーションリーダーズサミット実行委員会「行動認識AI開発で資本業務提携、セキュリティ分野のAI化など社会実装を目指す」(https://ils.tokyo/performance/case/case40.php
ここまで共創事業・事業共創について解説してきました。実際に共創事業を推進するには、事前の準備や戦略が重要になります。
もし具体的な進め方について疑問や課題を感じる場合は、専門的な知識を持つ機関に相談することも検討してみましょう。
また、本記事で触れた共創ケースに限らず、新規事業の成功事例集も参考になるはずです。
引用元:dotD公式HP(https://dotd-inc.com/ja)
新規事業に成功の型はありません。それでも、新規事業のノウハウや経験値があれば、その確率は変わるはずです。dotDは2018年の創業からわずか5年で、50件以上の新規事業の創出に関わっています。
マーケット調査にこだわっており、ユーザーの生の声を徹底分析。そのうえでKPI管理や進捗可視化、ピボット判断など、躓きやすいポイントを網羅的にカバーし、適切なプロセスを組み立てて伴走してくれます。
新規事業づくりの経験から多くの企業が苦戦する要素を導き出し、その要素である「新規事業のプロセス化」「KPI管理」「経営資源の最適化」を実現するための「dotHatch」というプロダクトも開発したほどに、新規事業の「経験値」が高い会社です。